社会人になりたての頃、私が一番おそろしかったのは、電話です。
お客様の社名が聞き取れない。これが一番困りました。
今回は、研修担当の立場から、ビジネスマナーについてわかりやすくお話しします。
新入社員のみなさん、それからビジネスマナーに苦手意識のある方々は必見の内容です。
ビジネスマナーは一度習得してしまえば、一生もの。この機会に身につけちゃいましょう!

どうしてビジネスマナーが必要なの?
ビジネスマナーと聞くと、堅苦しい印象はありませんか?
私はそう思っていました。男性のネクタイみたいなイメージ。
ギュウっとしばりつけられている感じです。
けれど、ビジネスマナーの正体を知ってからは、人として大切なものなんだと思えるようになりました。
「思いやり」です。
長谷寺のお団子屋のおばちゃんはいつもニコニコしています。その笑顔に接した外国人観光客は、日本はいい国と思ってくれるでしょう。
お団子屋のおばちゃんだって、疲れている時はある。けれど、それを出さないから凄い!
ビジネスマナーを理解してからは、笑顔や丁寧な接客に触れると、偉いなあ!凄いなあ!と思えるようになりました。
居心地の良さを作ってくれる人がいる。接客もそうだけど、社内にもいます。
それは、強さだと、わかるようになりました。
楽してグデ~っとして、感情のままに動いていたら、人を笑顔にすることなんて、きっと出来ないのです。
それでは、人を幸せにするビジネスマナーについて、学んでいきましょう!
「挨拶について」イチローの意見
高校生が挨拶についてイチローに質問をしました。

高校生
「挨拶をしろって、
コーチからもよく言われるんですけど、
挨拶ってなんでするんだろうって、たまに思うことがあって、
その意味を教えていただけたらいいなと思います。」
イチローの答え
「挨拶ってさ、人への敬意っていう意味も大きいね
自分たち、普段こうして頑張ってるでしょ、手抜いてないでしょ
相手も頑張ってきてる
で、グランドに立っているわけだよね
それに対する敬意
野球はひょっとしたら打って守って走ってをしてれば出来るかもしれない。
僕もまあ、そういうタイプだったと思う。
だけど、社会に出たらそれでは成立しないでしょ。
だって自分だけで生きているわけじゃないからね。
自分を大事にするということも、もちろん大事なことだけど
自分以外の大切な人を大切にする
だからやっぱり人への敬意っていうのは、人として、野球選手としてだけじゃなくて、人間として大事なことだと、僕は思う」
さすがイチローさんです。
「どうして挨拶するんですか?」と問いかけた高校生も素晴らしいです。
挨拶って、当り前すぎて、その意味を考えることは殆どありません。
けれど、改めて挨拶について考えてみると、とんでもなく大切なものというのがわかります。
イチローさんの台詞を会社に置き換えてみると、
「仕事が出来ればいいのかも知れない。けれど、そうはいかない。
だって、自分だけで生きているわけじゃないからね。」
となるのでしょう。
人間関係が煩わしい。仕事さえ出来ればいいじゃないか。
その気持ちもわかります。
けれど、やはり一人で生きているわけじゃないんですよね。
特に会社は、いろいろな人がいます。
だからこそ、皆が互いのことを大切にしていかないと、
あっという間にバラバラになってしまいます。
挨拶の力を侮ってはいけません。
知り合いに、挨拶を3回しなければ、人間関係が壊れます。
会社の人間関係がつまらないと思っている人は、挨拶にひと言を添えてみてください。
「おはようございます。いつも朝早いですね」
「おはようございます。今日のネクタイ、いいですね」
これを1ヵ月も続けると、自分を取り巻く世界に変化が起きます。どんな変化か知りたくはありませんか?やってみてのお楽しみです。
それからもう一つ、挨拶は自分から先に、笑顔で、がポイントです。
「返事」は何を現すか
返事とは、これまた細かい。

けれど、やっぱり外せません。どうしても大切だからです。
会社に入ったら、返事の存在は大きいのです。
返事は何を現すか、ズバリ「やる気」です!
上司に呼ばれても返事をしなかったらどうでしょう。
そんな新入社員なんて、居ませんよ。なんて思っていませんか?
上司に聞こえなければ、それは返事をしたことにはならないのです。
返事が上司の耳に届かなかった場合、上司の心の中は「返事くらいしろよ!やる気あんのか?」と思っています。
ですから、上司に呼ばれたら「ハイ」と聞こえるように返事をして、メモを持ってすぐに上司のもとに行きましょう。
これだけで、「おっ、〇〇君は気持ちがいいな。やる気があるぞ」の印象を与えます。これだけで好印象、やらない理由はありません。
さて、返事の怖いところは、返事は習慣ということです。
やる気のある、なし、と思われがちですが、
返事の習慣が出来ていないと、そもそも返事が出来ないのです。
なぜか?返事のシーンは、突然やってくるからです。
「山口くん、ちょっと」
山口くんはお客様からの電話をきったところかもしれません。あるいは、トイレから戻ってきたところかも知れません。常に不意打ちです。心の準備をさせてはくれないのです。
習慣がない人にとっては、あっという間に返事をするチャンスは逃げていきます。まるで幸運の女神さまのような話ですね。
ですから、普段から、誰に呼ばれても、ハイ!と言えるように、習慣にしてしまいましょう。
「言葉遣い」は心の鏡

ビジネスマナーと聞くと、社会人は敬語で話せばいい。ここで終わっていませんか?
確かに敬語が基本ですが、それはどうしてでしょう。
挨拶のテーマでイチローさんが教えてくれたように、相手に敬意を示すからです。
そう考えると、敬語が使えればそれでいいのか。そうじゃないよね。ということになります。
このことについては、「敬語」を学習してから、再び触れます。
ということで、まずは「敬語」について学びましょう!
1. 敬語の基本
- 尊敬語:相手の行為を高める
例)「いらっしゃいました」「おっしゃるとおりです」 - 謙譲語:こちらの行為を低める
例)「拝見しました」「申しております」 - 丁寧語:言葉を丁寧にする
例)「です」「ます」「ございます」
2.接客用語
- いらっしゃいませ
- かしこまりました
- 少々お待ちください
- お待たせいたしました
- 申し訳ございません
- ありがとうございました
3. クッション言葉
相手への依頼やお願いを柔らかくするための表現。
- 「恐れ入りますが〜」
- 「差し支えなければ〜」
- 「お手数ですが〜」
- 「もしよろしければ〜」
4.うっかりやってしまう NG表現
- 「一応~しておきました」 →責任感がない印象
- 「了解しました」 → 目上には「承知しました」「かしこまりました」
- 「ご苦労さまです」 → 目上には「お疲れさまです」
5. 言葉を選ぶ
- シーンにもよりますが、「すみません」を多用 すると、消極的でネガティブな印象を与えます。 できるだけ「ありがとうございます」に置き換えた方が印象が良くなります。
- 「できません」は否定で終わってしまいますが、 「〇〇でしたら可能です」と代替案を示すと前向きに伝わります
「です。ます。」調の丁寧な言葉を使うことが基本です。
「接客用語」と「クッション言葉」が使えるようになれば、スムーズに敬語が出るようになります。習うより慣れろです。
敬語が基本ですが、敬語だけでも不十分です。
前向きで元気が出る言葉をお勧めします。
「疲れました」とか「そんなことやってもムダではないですか」といったネガティブな言葉がどうしていけないか知っていますか?
周囲の雰囲気を悪くする。確かにそうですね、それともう一つ、理由があります。
あなたの言葉を一番聞いているのは、発したあなた自身だからです。
自分の言葉の影響を最も受けるのは、自分自身というわけです。だから言葉遣いは大切なんです。
言葉についての名言をご紹介しますね。
- あなたの使う言葉があなたの人生を操っている(アンソニー・ロビンス)
- 考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる(マーガレット・サッチャー)
- 一度口にした言葉は決して元に戻らない(枡野俊明)
- 言って欲しい言葉を言って欲しい表現で言ってくれる人を、人は好きになる(林修)
- 言葉は薬にもなれば、凶器にもなる(斎藤茂太)
- 幸せになるって簡単なんだよ。いつもニコニコして、いい言葉を使いな。それだけで幸せになれるんだよ(斎藤一人)
- 自分は誤解されやすいと思ったら、言葉が足りているかどうか反省してみる(美輪明宏)
- 「出来ない」という言葉を安易に言ってはならない。その瞬間から努力が止まる(孫正義)
入社して最初の頃は誰でも言葉遣いに敏感です。敬語は上手く使えないし、人にも慣れていないからです。
仕事に慣れて、敬語がスラスラ出てくるようになった時こそ、何のために「敬語」を使うのか、根本のところを忘れないようにしたいものですね。
「言葉遣いは心の鏡」なのです。
笑顔が見える「電話応対」

最近は、スマホを利用するので、家の電話がめっきり鳴らなくなりました。電話機がない家も増えましたね。
「受話器のついている電話は初めてです」なんていう新入社員も多いです。
だからと言って、会社で電話の出番がなくなったかというと、そうではありません。
メールやチャットなど、文章での伝達は、微妙なニュアンスが伝わらなかったり、文字数も増えて、時間もかかります。
複雑な問題や、急ぎの場合などは、電話による双方向のやり取りが適しています。まだまだ、ビジネスに電話はなくてはならない存在なのです。
うちの会社では、新入社員研修で電話応対は必須のカリキュラムです。
新入社員研修で電話応対をやらないと、現場で本当に困ることになるので、力を入れています。それに、電話応対研修は、敬語が使えるようになるというメリットがあるのです。
それでは、電話応対を学びましょう!
1.受話器の持ち方
受話器は左手で持ちます(利き手の逆です)。右手でメモをとるからです。
2.電話のベルは2回まで
会社によって違うと思いますが、うちの会社では電話のベルが2回鳴るまでには取るようにしています。3回鳴ったら、必ず「お待たせいたしました」を添えます。
ある会社は電話のベルは1回で取る!を徹底しているところもあるそうです。差別化のひとつですね。
電話をかけて、すぐに取らないと「大丈夫かな、この会社」と思います。学生さんも就活の時に志望の会社に電話をした時に、すぐに出ない時には、やはり「大丈夫かな?」と思うのではないでしょうか。
3.電話の受け方(取り次ぎ)
私「はい、〇〇商事でございます。」
相手「いつもお世話になっております。〇〇広告の山本と申します」
私「いつもお世話になっております。」
相手「広報の横田部長をお願いします。」
私「広報の横田でございますね。少々お待ちくださいませ」
✔️ポイント
1.「はい、〇〇商事でございます。」
(社名はゆっくりと聞き取りやすいスピードで言いましょう)
2.「広報の横田でございますね。」
(社外の人間の前で自社の人間を呼ぶ時には役職はつけません。)
4.電話の受け方(担当が不在の時)
私「はい、〇〇商事でございます。」
相手「いつもお世話になっております。〇〇広告の山本と申します」
私「いつもお世話になっております」
相手「広報の横田部長をお願いします」
私「申し訳ございません。あいにく横田は席を外しております。折り返しお電話差し上げましょうか?」
相手「そうしていただけると助かります」
私「かしこまりました。お電話差し上げるよう申し伝えます。私、伊藤がお受けいたしました。ありがとうございました」
✔️ポイント
1.「横田は席を外しております」
・社内にいる場合→席を外しております(すぐに戻ってくるニュアンス)
・社内にいない場合→外出しております(すぐには戻ってこない)
外出の時は、「連絡が取れ次第、折り返しお電話差し上げましょうか?」
5.相手が名乗らない時の尋ね方
担当者につなぐ時に、相手の社名、名前は必ず確認しましょう。
相手が名乗らなかった時には、こちらから聞きましょう。
- 恐れ入りますが、お名前頂戴できますか?
- 恐れ入りますが、ご社名頂戴できますか?
- 申し訳ございません。どちらの〇〇様でいらっしゃいますか?
6.相手の声が聞き取れない時の対処方法
相手の声が聞き取れない時は、下記のように聞くと良いですよ。
- 恐れ入りますが、もう一度お願いできますでしょうか。
- 申し訳ございません、少々お電話が遠いようでして…。もう一度よろしいでしょうか。
- 恐れ入ります、御社名をもう一度お願いできますか。
7.電話は笑顔で話しましょう
顔も見えないのに笑顔が必要なの?
と思われたかも知れません。
そうなんです。笑顔が大切です。人間の感性は凄いのです。電話は耳からの情報しか入りません。だからその分、神経が研ぎ澄まされるのです。笑顔で話せば笑顔の声が伝わります。相手に顔は見えないけれど、笑顔を心がけましょう。
服装・身だしなみ

服装は、会社の規定に基づきます。
自由な服装の会社でも、客先に行く時は、気をつけましょう。
- TPOをわきまえること。
- 清潔感を大切にすること。
この2つを守っていれば大丈夫です。
そうそう、それともう一つ大切なことは、人は見た目に左右されます。内面を変えるのって大変なことですが、それに比べて外見を変えるのは簡単です。
どんな人間に見られたいか。服装から入るというのは、、、大いにアリです。
メール、LINEのマナー

メールやLINE、これだけはやめて!
感情的なメールやLINEは絶対にやめましょう。百害あって一利なしです。
人間関係を拗らせるばかりです。
メールやLINEは後に残るものです。そして、文章で感情を伝えるのは、とっても危険なのです。後々まで残るというのもあるし、また、思っている以上にインパクトを与えてしまうのがメールやLINEです。
相手を褒めたり賞賛するのはOKですが、怒りやマイナスの感情をメールやLINEで伝えるのはやめましょう!
時間管理は自己管理

「時は金なり」という諺もあるように、ビジネスの世界では時間はとても大切です。時間を守ることで、仕事に対する信用も生まれます。
「そんなの当り前だよ」と笑わないでくださいね。
時間を守らなかったための失敗例、どこの会社でも山ほど事例があるんです。
具体的には、下記の行動が習慣化できれば信用アップです。ローマは一日にして成らず。コツコツ積み上げていきましょう!
- 遅刻をしない
- 5分前行動(集合時間の5分前には到着する)
- 期日より前に仕上げる
- 優先順位をつける
- 報告は早くする
上座と下座

上座と下座、耳慣れない言葉ですよね。
席には上座と下座があります。上座は上席のことです。
お客様は上座にご案内します。お客様が複数人の場合は、先方の役職順になります。社内の人も、役職順になります。
応接室の上座・下座

<応接室の上座>
- 奥の席
- 入口から遠い席
和室の上座・下座
<和室の上座>
- 床の間に近い席
- 奥の席
- 入口から遠い席

タクシーの上座・下座

<タクシーの上座>
・安全性
・乗り心地
助手席は、運賃のやり取りや、行き先のナビゲーターをするので、下座になります。
「上座・下座なんて、昔の話でしょ」――そんなふうに思っていませんか?
実はそれ、大きな間違いです。
席順というのは、人間の本能に根ざした序列であり、プライドそのもの。
例えば、各国の首脳が集まるサミット。どこに座ったか、どの位置で写真に写ったかがニュースになりますよね。
あるいは、エリザベス女王の葬儀。各国の要人がどの席に座ったかまで話題になったことを覚えている方も多いのではないでしょうか。
そう、「どこに座るか」「どこに案内されるか」=その人の格付け なんです。
だからこそ、ビジネスの場面で席順を理解することは必須なのです。
ビジネスマナーについて、お話ししてきました。
冒頭に書いた通り、ビジネスマナーはその人の強さだと思います。
笑顔でいたり、相手を元気にできる言葉をかけたり、自分のことばかり考えている人間には、到底できません。
私自身も、疲れた時や気分の悪い時、はっと気付くと、顔に出ていたりします。ですから、まだまだ修行の身です。
会社は自分一人ではないんだということ。そして出来れば自分にとっても、周りの人にとっても、居心地の良い場所でありたいと思うのです。そのためのビジネスマナーと思えば、そのスキルを高めることに、大きな価値が見えてくるのです。